母関数の公式の証明

 

複雑ネットワークとその構造 (連携する数学 4)』(矢久保孝介 著、共立出版)を読んでいたら母関数の章でいくつかの公式が登場し、証明は定義よりほぼ明らかとのことで割愛されていたので自分で計算してみました(実際に計算してみたら確かに定義よりほぼ明らかでしたが...笑)。

まず最初に母関数の定義は以下のようになります。
確率変数\(X\)(\(= 0,1,2,・・・\))の分布関数を\(P(X)\)とします。
このとき、\(P(X)\)の母関数\(G(x)\)は、
\[G(x) = \sum_{X=0}^{\infty} P(X)x^{X} \] と定義されます。

次に、今回証明した公式を列挙します。3番目の式だけシグマの始まりが異なっていることに注意してください。
\begin{align}
&\sum_{X=0}^{\infty}(X+1)P(X+1)x^{X} = G'(x)\\
&\sum_{X=0}^{\infty}XP(X)x^{X} = xG'(x) \\
&\sum_{X=1}^{\infty}(X-1)P(X-1)x^{X} = x^{2}G'(x) \\
&\sum_{X=0}^{\infty}P(X+1)x^{X} = \frac{1}{x}\{G(x) - P(0)\} \\
&\sum_{X=0}^{\infty}X^{2}P(X)x^{X} = x\{G'(x) + xG''(x)\} \\
\end{align}

それでは以下、実際に計算してみましょう。
(導関数が登場しない4番目以外の証明の)基本的な方針は、母関数の定義式の\(x\)による微分です。
ただし、無限級数なので項別微分が可能かどうかには注意しなければなりません。
\(P(X)\)は確率分布関数なので、正定値性と規格化条件
\[
\sum_{X=0}^{\infty}P(X)=1
\] を満たしています。この条件により、母関数\(G(X)\)は\(|x|\leq 1\)で絶対収束します。
以降母関数についてはこの範囲で議論することとします。この仮定により項別微分が許されます。

\(\sum_{X=0}^{\infty}(X+1)P(X+1)x^{X} = G'(X)\)の証明

母関数の定義式\(G(x) = \sum_{X=0}^{\infty} P(X)x^{X}\) の両辺を微分して
\begin{align}
G'(x) &= \left( \sum_{X=0}^{\infty}P(X)x^{X} \right)' \\
&= \left( P(0)+P(1)x+P(2)x^2+P(3)x^3+・・・+P(n)x^n+・・・ \right)' \\
&= P(1)+2P(2)x+3P(3)x^2+・・・+nP(n)x^{n-1}+・・・ \\
&= \sum_{X=1}^{\infty}XP(X)x^{X-1} \\
&(この式は以後よく出てくるので冗長になりますがあえて記しました。)\\
&= 1P(1)x^{0} + 2P(2)x^1 + ・・・ + nP(n)x^{n-1} +・・・ \\
&= \sum_{X=0}^{\infty}(X+1)P(X+1)x^{X}
\end{align}

\(\sum_{X=0}^{\infty}XP(X)x^{X} = xG'(X)\)の証明

\(G(x) = \sum_{X=0}^{\infty} P(X)x^{X}\)の両辺を微分して
\[G'(x) = \sum_{X=1}^{\infty}XP(X)x^{X-1}\] 両辺に\(x\)をかけて
\begin{align}
xG'(x) &= \sum_{X=1}^{\infty}XP(X)x^{X} \\
&= 1P(1)x^1 + 2P(2)x^2 + ・・・ + nP(n)x^n + ・・・ \\
&= 0P(0)x^0 + 1P(X)x^1 + 2P(X)x^2 + ・・・ + nP(X)x^n + ・・・ \\
&= \sum_{X=0}^{\infty}XP(X)x^{X}
\end{align}

\(\sum_{X=1}^{\infty}(X-1)P(X-1)x^{X} = x^{2}G'(X) \)の証明

\(G(x) = \sum_{X=0}^{\infty} P(X)x^{X}\)の両辺を微分して
\[G'(x) = \sum_{X=1}^{\infty}XP(X)x^{X-1}\] \(x^2\)かけて
\begin{align}
x^{2}G'(x) &= \sum_{X=1}^{\infty} XP(X)x^{X+1} \\
&= 1P(1)x^2 + 2P(2)x^3 + ・・・ + nP(n)x^{n+1} + ・・・ \\
&= 0P(0)x^{1} + 1P(1)x^2 + 2P(2)x^3 + ・・・ + nP(n)x^{n+1} + ・・・ \\
&= \sum_{X=1}^{\infty}(X-1)P(X-1)x^{X}
\end{align}

\(\sum_{X=0}^{\infty}P(X+1)x^{X} = \dfrac{1}{x}\{G(x) - P(0)\}\)の証明

これは次の式と同値。
\[\sum_{X=0}^{\infty}P(X+1)x^{X+1} = G(x) - P(0)\] したがってこれを示す。
\begin{align}
&\sum_{X=0}^{\infty}P(X+1)x^{X+1} \\
=& P(1)x + P(2)x^2 + ・・・ + P(n)x^n + ・・・ \\
=& -P(0)x^0 +P(0)x^0 + P(1)x^1 + P(2)x^2 + ・・・ + P(n)x^n + ・・・ \\
=& -P(0) + \sum_{X=0}^{\infty}P(X)x^X \\
=& -P(0) + G(x)
\end{align}

\(\sum_{X=0}^{\infty}X^{2}P(X)x^{X} = x\{G'(X) + xG''(X)\}\)の証明

\(G(x) = \sum_{X=0}^{\infty} P(X)x^{X}\)の両辺を微分して
\[G'(x) = \sum_{X=1}^{\infty}XP(X)x^{X-1}\] 両辺に\(x\)をかけて
\[xG'(x) = \sum_{X=1}^{\infty}XP(X)x^{X}\] さらに微分をしたいのですが、右辺の項別微分について少し考察が必要です。
果たしてこの級数は収束してくれるのでしょうか。答えとしてはイエスです。
収束するべき級数は、それを微分して得られるべき級数も同じ収束半径で収束します。
今回は微分したあと\(x\)をかけてしまいましたが、考えているのは\(|x|\leq 1\)の範囲なので問題ありません。
両辺を微分して
\begin{align}
G'(x) + xG''(x) = \sum_{X=1}^{\infty}X^{2}P(X)x^{X-1}
\end{align}
\(x\)かけて
\begin{align}
& x\{G'(x) + xG''(x)\} \\
=& \sum_{X=1}^{\infty} X^{2}P(X)x^{X} \\
=& 1^{2}P(1)x^{1} + 2^{2}P(2)x^{2} + ・・・ + n^{2}P(n)x^n + ・・・ \\
=& 0^{2}P(0)x^{0} + 1^{2}P(X)x^{1}+2^{2}P(2)x^{2}+・・・+n^{2}P(n)x^n + ・・・ \\
=& \sum_{X=0}^{\infty}X^{2}P(X)x^{X}
\end{align}

おわりに

基本的にはインデックスに気をつけながら項別微分すれば大丈夫そうですね。
最後の公式で2回目の微分をする箇所の議論にあまり自信がないのでコメントなどくださるとうれしいです。

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