書籍紹介『「カオス」入門の入門』

 

「カオス」入門の入門』(シ 著、暗黒通信団)の書籍紹介です。

界隈では有名な暗黒通信団さんから出版されている書籍です。
タイトル通り、内容はカオスに関するもので、全16ページです。「入門の入門」と題し、全16ページですが、16ページでこれだけカオスを語れるのかと思うほど濃密な1冊です。

全体を通して、具体的な写像(シフト写像やロジスティック写像)を用いつつカオスのいろいろな性質(初期値鋭敏性やリアプノフ指数、分岐現象など)に言及しています。

カオスと呼ばれる現象が持っている性質にはどんなものがあるのか、数学的にはどう取り扱えばいいのかを述べた後、締めでは、カオスという現象が自然科学に対して持つ「哲学的な」意味について語られています。
力学系の延長としてのカオスではなく、カオスそのものに焦点を当てているような印象です。

これまで僕が読んできたカオスに関する書籍と比較してみると次の3点が斬新だと思いました。
・微分方程式を持ち出さない点
・初期値鋭敏性だけでなく、位相推移性にも言及している点
・カオスの持つ哲学的な意味について言及している点
以下この3点についてもう少し言葉を補いたいと思います。

・微分方程式を持ち出さない点
興味の方向的な問題もあるのかもしれませんが、僕はカオスという文言を見たり聞いたりすると反射的に微分方程式と紐づけてしまいますが、当該書籍ではカオスの説明に関してほぼ微分方程式が出てきません。微分方程式を持ち出さず、ここまで鮮やかにカオスの紹介をしているのには驚きました。

・初期値鋭敏性だけでなく、位相推移性にも言及している点
カオスの特徴としてほぼ確実に言及される初期値鋭敏性ですが、この書籍では位相推移性についても言及し、その意味をわかりやすく説明してくれています。僕自身、「なるほど!」と思いました。

・カオスの持つ哲学的な意味について言及している点
この本で初めて出くわした内容です。なんというか、とてもびっくりしました。僕はカオスというものを「数字の上で現れる単なるひとつの現象」としてしか捉えていなかったのですが、実は自然科学に対して大きな意味を持っているという話を読んで衝撃を受けました。

内容は本格的ですが、イメージしやすいような例や言葉を用いてくれていて読みやすいです。
カオスについて多少勉強したことがある人でも、逆にカオスのことを全然知らない人でも楽しめると思います。

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